玉ねぎの雨の中
玉ねぎの収穫の大忙しの時、病院から電話があった。
「吉田さんですね」、誰だ、何事だ、緊張が走る。
桃太が交通事故、大した事はないらしい。
詳しい状況はわからないが、軽傷だとのことで大安心。
病院の玄関前の一番前に座り込みだらしなくタバコをふかしていた桃太を見て長年の心配がすっーと消えていくような安堵感をおぼえた。
彼は何度も事故をもらっている。一歩間違えばもある。
今度もそうだった。
仕事に向かうバイクで16号を走行中となりの観光バスが突然路肩により潰された。
でかいタイヤにぶつかった後の記憶がない。
保険の調査員の調べでは垂直に一回転しているらしい。
幸いに擦り傷だらけと、片足片手の打ち身がひどく仕事ができないと休んでいる。
元気のいいのは兄ちゃん達だ。
しょっちゅうぶつけて加害者として保険の後処理ばかりの彼らは被害者という立場がとても嬉しいらしい。
なにかと面倒を見てくれる。
弱音をはかない無口な桃太が寂しそうに海に溺れる夢を何度も見た。
バイクに乗り出して数ヶ月、一番心配な時期に大きなやくばらい、収穫の遅れた残りの玉ねぎは次の日雨にあたった。
「くさるかなぁー」、でも心ウキウキ。